ADHDの原因は脳のどこにあるのか
発達障害は脳の機能障害と言われています。
では、発達障害の特性を持つ子どもの脳はどうなっているのでしょうか。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の場合、脳の「前頭前野」がうまく働かないことが原因と言われています。
「前頭前野」は、神経細胞どうしの情報伝達によって、「自分の感情や意思」を「行動や運動など体の動き」に伝えていく働きをしています。
この神経細胞のことをニューロンと言って、ニューロンとニューロンをつなぐ部分をシナプスと呼びます。
通常は、ニューロンから「神経伝達物質」がシナプスを通って別のニューロンに情報を送っていきます。この情報の伝達がスムーズに行われるおかげで、私たちは自分の感情や意志を体の動きに変えていけるのです。
もう少し簡単に言うと、思い通りに体を動かせるのは、「神経伝達物質」がシナプスからシナプスへどんどん情報を伝えていってくれるからです。
しかし、ADHDの場合この情報伝達がうまくいかないのです。
それはどうしてでしょうか。
原因は「神経伝達物質の不足」です。
実は、情報伝達に使われる神経伝達物質は100種類以上もあるんです!!
この中でも、脳と体をつなぐ神経回路では、ドーパミンやノルアドレナリンが働いています。ADHDの場合、ドーパミンやノルアドレナリンが次のシナプスに移動せず、一部戻ってきてしまうのです。
元のシナプスに戻ってしまうことをトランスポーター(再取り込み)と言います。
その結果、情報を伝えていくはずのドーパミン、ノルアドレナリンが減っていってしまい、情報伝達がなかなかうまくいきません。
この仕組みがわかったお陰で、ADHDの症状を緩和するような薬もできました。
それは、トランスポーターの働きを抑えてドーパミンやノルアドレナリンが戻ってこないようにする薬です。
ただ、副作用もあるため本人の気持ちや医師との相談が大切です。
私たちが普段何気なく行っていることも、実は脳が奇跡的な働きをしてくれているからです。
そのため、ほんのわずか脳の働きが違うだけで、日常生活でみんなと同じことが同じようにできなくなってしまいます。
ADHDは誤解されやすいですが、脳と体をつなぐ神経回路で必要な「神経伝達物質が不足」していることが原因なのです。