漢字とカナは使う脳が違う
日本は、漢字とカナが混ざっている文字を使っています。カナにはひらがな、カタカナがありますし、ローマ字も含めれば、日本語って複雑です。現代では、世界でも珍しいといえます。
この漢字とカナ、実は脳の別々の場所を使って読んでいるのです。
カナはアルファベットと同じで、それ自体に意味があるのではなく、記号を文字としています。例えば、「あ」という字はその形に意味があるのではなく、私たちがその形を「“あ”と読む」と決めて使っています。
では漢字は、というと、それ自体に意味があるものです。「後」と「跡」、「痕」は同じ「あと」でもそれぞれに別々の意味があります。
ですので、私たちの脳は漢字を記号としてではなく、絵を見るのと同じように情報を扱います。
私たちの脳は、絵と記号を別々の場所を使って認識します。そのため、漢字とカナも別々の場所で情報処理がされるのです。
この違いは、万が一、文字を読む脳の機能が働かなくなってしまったときに役立ちます。もし、漢字もカナも同じ脳の機能を使って読んでいたら、その機能が働かなくなってしまった場合、文字が全く読めなくなってしまいます。
しかし、どちらか一方の機能が働かなくても、もう一方の機能が働いていれば、漢字だけ、またはカナだけを読むことができるのです。そういう意味で日本語はメリットのある言語だと思います。
それでは、実際に脳でどう処理されているのかというのをまとめてみました。
<カナを読むプロセス>
後頭葉「視覚野」 ➡ 頭頂葉「左回角」 ➡ 側頭葉「ウェルニッケ領野」
<漢字を読むプロセス>
後頭葉「視覚野」 ➡ 側頭葉「左側頭葉後下部」 ➡ 側頭葉「ウェルニッケ領野」
<カナを書くプロセス>
側頭葉「ウェルニッケ領野」 ➡ 頭頂葉「左回角」 ➡ 頭頂葉「体性感覚野」
<漢字を書くプロセス>
側頭葉「ウェルニッケ領野」 ➡ 側頭葉「左側頭葉後下部」 ➡ 後頭葉「視覚野」 ➡ 頭頂葉「左回角」 ➡ 頭頂葉「体性感覚野」
漢字とカナでは読む場合も、書く場合もプロセスが全く違うんですね。
カナを読むプロセスと同じように「後頭葉から頭頂葉」の経路は背側経路といって、「位置」を認識するときに使います。
漢字を読むプロセスと同じように「後頭葉から側頭葉」の経路は腹側経路といって、「形」を認識するときに使います。
例えば、机の上にあるコップを手に取るとき、「コップがある!」は腹側経路で、それをつかむために「手や指をコップまで動かす」ことを背側経路で行っているのです。
このように、脳はさまざまなことを独立した場所を使って行っています。それを適切に連携をさせて、私たちは自然と行動できているのです。