発達障害は個性
発達障害は「障害」という言葉の響きから、疑いを持たれてた時点で少なからずショックを受けます。
これから、自立して生きていけるのか。
周りから偏見を持たれないか。
治らないのか。
一生付き合っていかなければいけないのか。
不安でいっぱいになります。
ただその一方で、親の育て方でもなく、本人の意志でもなく「脳の機能」が原因だと知ってほっとした、というお話も聞きます。
それでも、「障害」という言葉に対するイメージから、不安の方が大きく、受け入れるのに時間がかかることがほとんどだそうです。
確かに、普通であること、マジョリティであることは、それだけで自分の存在意義が保障されているような安心感があります。
自分は間違っていない、自分はここにいていい、自分には生きる意味がある、自分は一人でも生きていける、それが当然のように感じられるのが「普通」だと思います。
それが、普通でない、マイノリティ、誰かの助けを常に借りないと社会に適応できない、そんな現実を突きつけられたら、誰だって不安になります。
自分の感覚はおかしいのか、自分はここにいていいのか、自分には生きる意味があるのか。そうやって、自分自身を否定してしまうのが自然なのかもしれません。
どうして自分だけ?なんで自分が?
そんな答えのない質問に苦しむこともあるかと思います。
いつか、劇的に変わって、みんなと同じようにできるかもしれない。そう期待して今の自分を見ないように、現実逃避をすることだってきっとあります。
それでも、発達障害は脳の機能障害です。
脳の仕組み上、できることとできないことがあります。
私たちはそれぞれ0.1%のDNAの違いから、個々別々の個性ある脳を持っています。
暗記ひとつにしても、全く苦手な人、読めば覚えられる人、図にすると覚えられる人、がむしゃらに書くと覚えられる人、音読や身ぶり手振りをつけると覚えられる人、一度見れば忘れない人など覚え方はそれぞれです。
自分の得意なやり方があり、それがその人の得意な脳の使い方になります。
簡単に言うと、この延長に脳の機能障害、発達障害があるのです。
つまり、脳をうまく使って社会に適応できれば気づかれることはなく、脳をうまく使えずに適応できないと発達障害が疑われる。何とも境界線が曖昧で、判断が難しいのが特徴でもあります。
だから発達障害は「脳の個性」とも言われるのです。
最近は「発達のでこぼこ」と表現されることもあります。
私たちは暗記が苦手だからといって、自分を責めたり、否定したりしません。どうやったら覚えられるのか工夫します。
発達障害も同じです。できないことを責めたり、否定しても状況は変わりません。
もちろんできないことを、いつかきっとできるようになる、と夢見ていても結果は同じです。
それよりも、
「周りの環境を、どう工夫すればできるようになるのか」
「できる部分を活用して、できない部分をカバーするにはどうすればいいのか」
そこに努力のポイントを持っていきます。
周りの支援とは、適切な努力ができる環境を整えて、励まし続けることです。
- 例えば、時間を読むのが難しければ、タイマーを使う。
- 耳からの情報だと理解が難しければ、あらかじめメモに指示を貼っておく。
- 書くことが難しければ、ボイスレコーダーを使ったり、キーボードを使ったりする。
その他にも、今できることを活用して、できないことをできるようにする工夫が、実はたくさんあります。
また、工夫しても3割くらいしかできないなど、どうしても完璧にはいかない、ということもあります。その場合、周りの人にあらかじめ伝えておいて、カバーしてもらったっていいと思います。
このように、今の自分を受け止め、肯定し、努力を重ねることで成功した人たちがたくさんいます。
世界でも、もちろん日本でも有名人で発達障害を告白されている方たちがいます。
言われなければわからないような、陰で努力をたくさん重ねられて、社会に適応し、成功している方たちばかりです。
だからこそ、発達障害から逃げずに、勇気を持って受け止めること。
努力も大変です。周りのフォローも大変です。それでも、決してあきらめないで環境を工夫していけば、必ず適応力は育ちます。
「工夫の方法は100万通り、決して諦めるな!」です。