二次的な合併症に繋がるマーチ
もともとの発達障害が原因で「つまずいて」しまっているのに適切なアプローチがなかったため、どんどん状況が悪化してしまう。
この悪化のプロセスを「マーチ」というそうです。
そして、もともとの「つまずき」よりもさらに大きな「別の困った症状」が出てきてしまう。
この、「別の困った症状」が二次的な合併症です。
二次的な合併症が起こるのは、発達障害の症状や原因の理解がまだ広がっていないこと、誤解されやすいことなどが理由です。
では、二次的な合併症は具体的にどのように起こるのでしょうか。
発達障害の中でも、ADHDの傾向が強い子を例に挙げたいと思います。
ADHDの子がよくつまずく状況から二次的な合併症までの「ADHDのマーチ」です。
①いつもこんなことで困っています。
学校ではいつも忘れ物をしてしまう。家を出る前にちゃんと確認しているのに、なぜかランドセルの中におもちゃやゲームが入っている。
友達と遊んでいるとつい楽しくなって、周りが見えなくなってしまう。
夢中になりすぎて、順番が守れない、ルールが守れない・・・
気がつくと友達から「遊びたくない」と避けられるようになってしまう。
仲良くしたいのに、思い通りにいかないと感情が爆発して物を壊したり、怒鳴ったり、暴れたり、自分でもコントロールができなくなってしまう。
家の中でも、片づけができない、時間が守れない。
家族との食卓も、座って最後まで食べていることができない。
②困っていることに対して、怒られます。
親からも、先生からも
「あなただけどうしていつもできないの。」
「ちゃんとやるって言ったのに、全然できていないじゃない。」
「言い訳ばかりしていないで、頑張りなさい。」
「他の子は頑張っているんだから、しっかりしなさい。」
といつも怒られてしまいます。
何度言ってもできないので親や先生も自信をなくし、自分を責めてしまうこともあります。
③失敗し続け、怒られ続けるとこうなります。
本当は脳の機能障害でできないのに、本人の努力や我慢が足りない、だらしがない、わがままだ、と怒られます。
「失敗したくない、今度こそほめられたい!」
そう心に誓って、
「ちゃんとやろう!」
「集中しよう!」
「我慢しよう!」
「もっともっと頑張ろう!!」
と懸命に気持ちをコントロールしようとします。
でも、そのコントロールがそもそもできないのです。
「いつまで頑張ればうまくいくんだろう。」
「まだまだ、努力が足りないのかな。」
「頑張ってるのに、どうしてわかってくれないんだろう。」
「どうして自分ばかり怒られるんだろう。」
そうです。頑張り疲れてしまうんですね。
頑張ろうと焦って、今までできていたことさえできなくなります。
そうすると、ますます自信がなくなっていきます。
④頑張り疲れて、自信がなくなってしまったら・・・
ここまでくると、何をどうしたらいいのか通常の判断ができなくなってしまいます。
「どうせ頑張ったっていいことないし。」
「どうせ自分は嫌われているし。」
「どうせ何をやってもうまくいかないし。」
そうやって自分のことも他人のことも信じられなくなってしまうのです。
「親や先生の言われたとおりに頑張ったけど、全然ダメじゃん。」
「親や先生の言うことを聞いたって、うまくいかなかったし。」
「誰もわかってくれない。」
「きっとみんな自分のことが嫌いなんだ。」
どんどん思考がひねくれてしまいます。
⑤合併症へ繋がっていく
自信がなくなり、頑張るモチベーションも低下すると、無気力になっていきます。
それが、どんどん内向きになっていくと、不登校、引きこもりに繋がり、ますます孤立をしていきます。
親や先生からの指示にも従わなくなります。
わざと怒らせるような態度をとったり、
嘘をついたり、人のせいにしたり、怒りっぽくなります。
さらにこの状況がエスカレートすると、反社会的・攻撃的な行動に繋がっていきます。
例えば嘘をついたり、他人の物を盗んだり、壊したり、人や動物を傷つけたり、放火や家出、薬物乱用などです。
もう、ここまでくると何をどうしていいのか本人も周りもわからなくなってしまいます。
最初は「つまずき」だったのが社会的不適応に発展してしまうのです。
できることなら、発達障害の特性に早く気がついて適切な「頑張り方」を見つけてほしいと願うばかりです。
それでも、たとえ努力の方向が間違っていても「頑張った経験」は必ず将来自分に返ってきます。
二次的な合併症になったら人生おしまい、ではありません。
あくまでも、イメージがしやすいようにひとつの例として参考にして頂ければと思います。