ディスグラフィアとディスカリキュアの原因
LDの原因、後半戦です。
ここで紹介するのは、以下の中の④から⑥です。
① 短期記憶
② 音韻処理
③ 正書的処理
④ 視覚情報処理
⑤ 協調運動
⑥ 継次処理と同時処理
まずは④から。
④ 視覚情報処理
これはLD(学習障害)全般、つまり、読み書きが苦手なディスレクシア、書くことが苦手なディスグラフィア(書字表出障害)、算数が苦手なディスカリキュア(算数障害)の原因と考えられています。視覚情報処理の中でも、「眼球運動」と「視覚認識」の2つが関係してきます。
まず「眼球運動」です。これは読んで字のごとく、ピント調節など目の動きについてです。読み書きにはまず、読みたい文字や書きたい場所に両目のピントをスムーズに合わせることが必要です。また、二次元の紙に立体的な三次元の図形を書くときや、その図形を見るときなど遠近のピント調節が必要です。
これがうまくいかないと、スムーズに読むことが難しい、黒板の文字をノートに写せない、立体的な図形の奥行きがわからないなどとなります。
次に「視覚認識」です。人は目からの情報が80%を占めるほど、たくさん目を使っています。色、形、位置、動きなどさまざまな情報を取り入れます。例えば、新聞や雑誌の文字を大きく拡大すると、ただの点の集まりです。しかし、点の集まりを文字として認識し、白い部分を背景として区別することがでいるので、「文字が書いてある」とわかるのです。
これがうまくいかないと、文字がただの点の集まりにしか見えなかったり、ぼやけてしまったり、左右反転して見えたりなどします。また、奥行きなどがうまく認識できず、算数の空間図形をイメージできないことがあります。
この視覚情報処理については、見えている世界がその子にしかわからないため、気づくのが遅れてしまうことがあります。もちろんLD、発達障害に関係なく、人それぞれ目に映っている世界は異なります。子どもの目に映る世界を想像してみるのも、その子を知るきっかけになるのではないでしょうか。
⑤ 協調運動
発達性強調運動障害とも言われています。書くことが苦手なディスグラフィアの原因と考えられています。ADHDと症状が合併して出ることでも知られています。
発達性協調障害とは、異なる動作を同時に動かすことが苦手なことです。わかりやすく言うと、とても不器用というイメージです。ディスグラフィアの場合、「目と手の協調運動」がうまくいかないため、目で文字を見ながら手を動かして書くことが難しくなります。黒板や教科書、問題集に書かれている文字や数字を、ノートに書き写すのに時間がかかってしまったり、読みにくい字になってしまったりします。
⑥ 継次処理と同時処理
これは、算数が苦手なディスカリキュアの原因と考えられているものです。「継次処理」と「同時処理」は、どちらも脳の情報処理の方法です。ひとつひとつ順番に理解していくのか、まずは全体をつかんでから細かく見ていくのかの違いです。
まず、「継次処理」です。これは物事を理解するときに、順序立てて初めからひとつひとつ理解をしていくことです。時間の流れに沿って順番に考えていきます。耳からの情報や言葉での情報が理解しやすいようです。
この「継次処理」がうまくできないと、数字が1から順番に大きくなっていく考え方を理解できず、数字の大小がわからなかったり、式を順序立てて解いていくことが難しかったりします。また、言葉での長い指示に理解がついていけないことがあります。
次に「同時処理」です。これは「継次処理」と反対に、まずは全体を絵や図などで見てから、細かい部分を理解していくことです。全体の情報があるので、細かい部分どうしの関係を見つけていくことができます。順番に話を聞いていくのではなく、映像や図をまず見た方が理解しやすいようです。
この「同時処理」がうまくいかないと、図を見て全体を理解することが難しくなり、算数の平面図形など立体的な図をうまくイメージできません。また、物事を関連づけていくことも難しかったりします。
私たち、誰もが「継次処理」と「同時処理」の得意、不得意が分かれるようです。どちらがいい悪いはありませんが、コミュニケーションの方法として日常生活でも使えそうです。